2025年6月12日、トッテナム・ホットスパーFCはブレントフォード前監督のトーマス・フランク氏を、2028年までの契約で新たなヘッドコーチに任命しました。
5月にヨーロッパリーグを制したばかりのアンジェ・ポステコグルー監督の電撃解任からわずか数週間での決断となり、欧州制覇の余韻冷めやらぬスパーズにとっては大きな転機です。
- トッテナムがトーマス・フランクを2028年までの契約で新監督に迎えると正式発表
- 前任のポステコグルーはヨーロッパリーグ優勝後に電撃解任
- フランクはブレントフォードをプレミア昇格に導いた実績を持つ
- スパーズは今季プレミア17位と不振だが、来季CL出場権を獲得済み
- フランクのデータ駆使型スタイルがトッテナムをどう変えるかに注目
フランク招聘は「再建」の一手か?ポステコグルー解任の是非
アンジェ・ポステコグルーは2024-25シーズン、ヨーロッパリーグでトッテナムを頂点に導き、17年ぶりのメジャータイトルをもたらしました。
しかし、リーグ戦では22敗を喫し17位に低迷。クラブ上層部は“長期的な再建”を視野に、彼の解任を決断しました。
ファンの間では、「優勝監督を即座に解任する判断は短絡的では」との批判も上がっています。
キャプテンのロメロもSNSで「常に障害を乗り越えてくれた」と元監督への敬意を表明しており、一部ではこの投稿がダニエル・レビィ会長への当てつけではという憶測も。
ブレントフォードでの功績が評価されたフランク
トーマス・フランクは、デンマーク出身の51歳。2016年にブレントフォードのアシスタントとして加入し、2018年からヘッドコーチを務めました。

2021年にはクラブをプレミアリーグへ初昇格させ、13位→9位→16位→10位という順位で安定した成績を残しました。
昨季は得点数でプレミア5位タイの66ゴールを記録し、攻撃的スタイルとデータ分析の活用に定評があります。
クラブ関係者は「彼は選手育成や文化作りにも尽力した」と感謝を述べています。
新スタッフとともに再出発
トッテナムには、フランクの片腕であるジャスティン・コクレーンがアシスタントとして同行。
さらに、ブレントフォードからパフォーマンス部門責任者のクリス・ハスラム、アナリストのジョー・ニュートンも合流します。
マンチェスター・ユナイテッドからはアシスタントコーチのアンドレアス・ジョージソンも加わり、新体制が着々と整備されています。
これは、単なる監督交代ではなく、クラブの構造改革に着手する第一歩と見なすべきでしょう。
スタイルの違いが際立つ“ポステコ→フランク”の転換
前任のポステコグルーは、超攻撃的かつハイラインを特徴とする戦術で知られましたが、守備の脆さが課題でした。
一方、フランクは「無駄なロングシュートを好まない」「選択的クロス」「空中戦への高い競争意識」といった、合理的かつ統計に基づく戦術を得意とします。
以下は、両者の戦術傾向を比較したポイントです。
指標 | トッテナム(2024-25) | ブレントフォード(2024-25) |
---|---|---|
ミドルシュート比率 | 28% | 23%(リーグ最少) |
クロス数 | 752本 | 675本 |
空中戦(エアリアルデュエル) | 872回 | 1,210回(リーグ最多) |
ファウル数 | 高い | 低い(マンCに次ぐ少なさ) |
こうしたスタイルは、「無駄なく、確実に」というトッテナム再建の指針と一致しており、現実的な勝利を重視するファン層にとっては歓迎材料とも言えます。
フランク就任がもたらす“中期的安定性”と“再育成”への期待
トッテナムは近年、監督交代が頻繁で、2021年以降だけでもヌーノ、コンテ、ポステコグルー、そして今回のフランクで4人目です。
だが、フランクには以下の点で特別な期待が寄せられています。
項目 | 内容 |
---|---|
育成力 | フランクはイヴァン・トニーらを育て、戦力化した実績があり、若手有望株の育成にも長けています。 |
冷静なマネジメント | データと感情のバランスを取る「エモーショナル・インテリジェンス」が高く、混乱しがちなスパーズを落ち着かせられる可能性あり。 |
長期視点 | 3年契約であることからも、即結果ではなく3年スパンでの再建がクラブに期待されていると考えられます。 |
トッテナムに必要なのは“忍耐力”と“実利志向”
トッテナムは今季、リーグでは失敗、欧州では成功という複雑なシーズンを過ごしました。
そんな中でのフランク就任は、一見するとリスクですが、実際には論理的かつ成長志向の選択とも言えます。
若手の台頭と中長期的視野を武器に、トッテナムは再びプレミアの上位常連を目指す戦いに挑む準備を整えつつあります。